
中国の女性経営者が2年前に買った沖縄の島を今夏にも訪問するという。沖縄県北部の無人島、屋那覇島で、当時購入したその女性がSNSに投稿して話題となったのは記憶に新しい。
もともと、74万平方㍍の同島の半分ほどを所有しているのが東京に本社を置く中国系コンサルティング企業。そこから購入というから当時は日本国内に懸念の声が出ていた。
政府は昨年末、重要施設周辺や国境離島における2023年度の土地などの取引状況を公表したが、外国では中国の取引数が203件で最も多かった。経済安全保障の観点からも外国人による土地取得などに対する抜本的な規制が必要だろう。
とくに沖縄を含む南西諸島は中国の海洋覇権の最前線になっている。中国人女性の購入意図が直接中国当局と関連しているかどうか確証はない。だが、中国お得意の“サラミ戦術”(切ったサラミの断面が同じように気付かないうちに目的を果たす外交戦術)に沿ったものではあろう。
米国では日本製鉄によるUSスチール買収計画に、安全保障の観点からバイデン大統領(当時)が「待った」をかけた。日鉄の橋本英二会長は、米国の国益にも十分に沿った条件で進めたことを強調している。
強固な同盟国同士でありながら、国益を盾にした論理はシビアな現実を突き付けた。件の土地購入問題で当時の官房長官は「動向を注視する」姿勢を示しただけだ。日米の安保感覚の差は大きい。