トップコラム国防の義務は国民の自然義務【羅針盤】

国防の義務は国民の自然義務【羅針盤】

政府は、昨年12月20日、自衛隊の処遇改善に関する関係閣僚会議を開き、給与や手当、住環境の整備に関する基本方針を策定した。民間との格差を縮め自衛官のなり手の確保も狙うとしているが、格差を逆転させ格別の処遇を与えるところまでは踏み込んでいない。

最近は、自衛隊の仕事も大半は高度の装備を扱う技術職になり、体力・気力勝負の仕事ではなくなったので、女性、年寄りでも全員終身雇用でもよい等の声も聞かれる。しかし、そうなれば、自衛隊は時間の経過とともに老齢化、弱体化する。やはり自衛隊は、任務上、身体強健で気力の充実した人々を大量に必要とする組織だ。自衛官の募集適齢人口が減少する中で、強健で優秀な若い人々を今後確保できるか否かは国家にとっても大問題だ。

この問題を解決して良質の隊員を確保する最も単純かつ効果的な方法は、徴兵制を採ることだ。古来多くの国が、この方法で兵員の確保という難問を解決してきた。しかし、政府答弁によれば、日本では、「平時であると有事であるとを問わず、違憲」だ。徴兵制度が「一定の役務に従事することを本人の意思に反して強制させる」ものだから、憲法で禁じる「意に反する苦役」に当たり、自衛隊員は、「志願制により本人の自由意志に基づいている」から、「その意に反する苦役」には当たらないとする。国会は、自衛隊員を物好き扱いしている。

確かに、日本国憲法では、国民の国防の義務は定められていない。憲法第25条には、国民の生存権と国の生存権保障義務が規定されているが、国防の義務は規定されていない。とはいえ、国に生存権の保障の義務があり、国民に生存権があるなら、当然国民に国防の義務もあるべきだ。

普通の国は、国民の生存権の保障を、最も優先度の高い国家の義務とし、国民の国防の義務を崇高な義務としている。徴兵制を採る国は、軍隊における服役を、国民全体への奉仕とし、原則として全国民平等に負担するように定めている。これは、納税の義務と同じで、国民全体の福祉、最大多数の幸福を目的とする。

要は、徴兵制を採るかどうかは、それぞれの国の制度・政策の問題だ。自衛権を自然権というなら、国家に属する限り、国防の義務は国民の自然義務だ。憲法が国民のためのものなら、いざという時に身の危険を顧みず国家国民を守る任務が、その任に当たる人の言わば好みによって「意に反する苦役」になるなどと解するべきではない。日本もそろそろ正常で普通の国に返るべき時期だ。(遊楽人)

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