トップコラムマンガン団塊と「暗黒酸素」【上昇気流】

マンガン団塊と「暗黒酸素」【上昇気流】

南鳥島周辺海域で見つかった海底資源のマンガンノジュールを手にする東京大大学院の加藤泰浩教授(中央右)と日本財団の笹川陽平会長(同左)ら=2024年6月21日午後、東京都港区

日本財団と東京大学は昨年6月、東京・南鳥島周辺の日本の排他的経済水域にレアメタル(希少金属)を豊富に含むマンガン団塊が2・3億㌧分布していることを明らかにし、1日数千㌧規模で引き上げる実証実験を行うことを発表した。

リチウムイオン電池の材料に使われるコバルトなど、国内消費量の約75年分に当たる。日本財団の笹川陽平会長は「資源大国になれる可能性」に言及。東京大学の加藤泰浩教授は「コバルトやニッケルは経済安全保障上極めて重要な資源」と開発の意義を強調した。

一方、加藤教授は「海洋環境に負荷をかけることがないよう、皆さんが納得するデータをしっかり示していきたい」と述べた。

その笹川会長がロンドンで、日本財団が英研究機関スコットランド海洋科学協会(SAMS)と共同で、深海底で生成される「暗黒酸素」の調査を開始すると発表した。

昨夏、太平洋の深海で暗黒酸素の存在を確認したSAMSのアンドリュー・スイートマン教授が、マンガン団塊から発生している可能性が高いという見解を示しているのだ。暗黒酸素の存在は、マンガン団塊を引き上げた場合の環境への影響に直結し開発計画にも影を落とす可能性がある。

暗黒酸素の生成は世界の注目を集めている。笹川会長は「人類の生存を考える上で、深海で何が起きているかを知ることが重要だ」とその意義を語る。最後のフロンティアと言われる深海に人類の未来を拓(ひら)く秘密が潜んでいる。

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