
世界的な傾向だが、生成AI(人工知能)をはじめデジタル技術の急速な普及により今後、電力需要は大幅に増えるとみられている。またエネルギー安全保障の観点からも、安定的な原発による発電が再注目されている。
わが国も同様で、昨年末示された第7次エネルギー基本計画(原案)では原発について、これまでの「可能な限り依存度を低減する」との記述を削除し、脱炭素実現などのために「最大限活用する」と記された。原発の評価が確実に上向いている。
出力の制御時間が短い革新軽水炉、炉心が小さく自然循環冷却が行われる小型モジュール炉、放射性廃棄物が非常に少ない核融合炉の研究や開発も進んでいる。これらが安全性の向上に資するよう、事業者や国は手を尽くしてほしい。
2011年の東京電力福島第1原発の事故前は54基の原発が稼働していたが、25年1月時点で再稼働を果たした原発は14基。巨額の費用を費やすエネルギー技術開発は一筋縄でいかないことを思い知らされた。
その上で先の原案は、福島第1原発の廃炉に関する技術や知見について「米・英・仏の間での二国間協力の枠組み」を強調し「各国の原子力施設における安全性の向上や防災機能の強化に貢献する」と明言。廃炉を通じて原子力技術向上に寄与することを約束した。
文明の発展を支えてきたのは科学技術で、その基本にエネルギー利用がある。化石文明の終焉(しゅうえん)を見据えなければならない。