
能登半島地震で苦闘する輪島塗の職人たちの1年間を特集したテレビ番組を幾つか観た。地震で家や工房が半壊するなど大きな被害を受け、それでも何とか頑張って少しずつ作業を再開したところ、9月の豪雨が襲った。地震以上に豪雨は痛手で、心が折れたという人も少なくなかった。
救いは、それを支援する人や、再起を願うお得意さんがいることだ。そんな人たちのためにも輪島塗の伝統を絶やすわけにはいかないのである。
輪島塗は、堅牢(けんろう)さと精巧で優美な加飾(かしょく)が特長だ。そのため一つの漆器が出来上がるまで100を超える工程がある。職人の種類も木地師、下地師、研師、上塗り師、呂色(ろいろ)師、蒔絵(まきえ)師、沈金(ちんきん)師などがあり、それらの分業によって成り立っている。
職人たちは仮設住宅に住み、仮設の工房で作業を始めるが、問題は、それぞれの工程を担う職人との連携である。それまで、研ぎを頼んでいた職人が亡くなったり、二次避難していたりと、その連携プレーができないことである。
新しい職人を探して何とか再開するのだが、一つの漆器がいかに多くの職人の手を経ているかがよく分かる。
番組を通し、この分業制は輪島塗の質の高さを支えるものであると同時に、人々の生業(なりわい)とコミュニティーを支えるものであることを改めて浮き彫りにしていた。
経済効率を超えた、持続可能性についても考えさせられた。
(晋)