トップコラム公務員道提唱した童門冬二さん【上昇気流】

公務員道提唱した童門冬二さん【上昇気流】

童門冬二さん(Wikipediaより)

作家の童門冬二さんが昨年1月に亡くなっていたことが伝えられた。本人の遺志で1年間伏せられていたという。96歳。作家になる前は東京都庁に勤務して広報室長、企画調整局長、政策室長などを歴任。

そこで体験し思索してきたのは行政機構の在り方だった。その頃から同人雑誌を舞台に作品を発表していて、童門の名前はデーモンに由来していたという。その後追求していくテーマは「組織と人間」となった。

おびただしい数の作品があるが、童門さんを一躍有名にしたのが『小説 上杉鷹山』。この作品が上梓(じょうし)された時、インタビューさせてもらった。長年、江戸時代の藩政改革について研究し、「失敗と成功の事例」を見てきたという。

幕府も3度行政改革をしたがいずれも失敗。経済政策と政治倫理との両立が困難なためだったが、上杉鷹山はそれを成功させた。その改革は形式主義を廃止して、藩民に生きる希望を与えようとするものだった。

それを童門さんが目の当たりにしたのは山形県米沢市役所でのこと。職員に鷹山の訓戒の書「伝国の辞」が配られていた。鷹山の師は細井平洲で、孟子の思想が根にあった。「君主は臣民の父母」という思想だ。

「役人は藩民のためにある」。童門さんはここにフランスの人権宣言同様の思想を読み取っていた。だが上杉家は外様で、幕府も他藩もよく認識していたわけではなかったという。「武士道につながる公務員道」が童門さんの自説だった。

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