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「ウイ・シャル・オーヴァーカム」――。黒人牧師による霊歌を原曲とする歌で、1976年の米大統領選に勝利したジミー・カーター氏はワシントンに向かう飛行機の中でスタッフと共に熱唱した。昨年末にカーター氏の訃報が届くと、真っ先にこの歌が脳裏に浮かんだ。
ワシントンで営まれた国葬にはバイデン大統領や生存する歴代大統領が顔をそろえた。来週、大統領に就任するトランプ氏は隣席のオバマ元大統領と談笑していた。政敵とも言える2人が何を語り合ったのか、報道では知れない。
トランプ氏の大統領就任演説が注目されるが、オバマ氏の就任演説も忘れ難い。「政府にできることやしなければならないことがあるにせよ、最終的に、国民の信念と決意がこの国のよりどころだ」と述べ、こう訴えた。
「我々の成功の土台となる価値観は誠実や勤勉、勇気、公正、寛容、好奇心、忠誠心、愛国心といった古いものだ。これらは、不変の真実である。これらは、歴史を通じて進歩を遂げるための静かな力となってきた。この真実に立ち返ることだ」(2009年1月20日)。
民主党のオバマ氏をもってしても「不変の真実」は動かし難い。共和党のトランプ氏が昨秋、大統領選に勝利したのはその立ち返りだったように思える。
冒頭の歌の邦訳は「勝利を望みて」。歌詞には「我ら打ち勝たん、いつの日か。心に深く、我は信じる」とある。そんな信念が日本の政治家に欠けてはいまいか。