
オーストリアの国民経済は隣国ドイツと同様、リセッション(景気後退)だ。企業の破産や閉鎖のニュースが増えてきた。同時に、失業者も増加傾向にあるが、ジャーナリストの失業もここにきて増えている。労働市場サービス(AMS)によると、昨年12月に失業中だったジャーナリストは956人で、2023年同月比で156人増加したという。
オーストリアの幾つかの大手メディア企業では23年以降、編集部を含む職場で従業員の削減が行われてきた。ジャーナリズム労働組合(GPA)は、失業中のジャーナリストやメディア職従事者のための業界労働基金の設立に取り組んでいる。従業員の削減は編集部だけでなく、メディア企業の他の部門にも影響を及ぼしているという。
アルプスの小国オーストリアでもインターネット・メディアの攻勢もあって紙媒体のメディア業界は存続の危機に直面している。その象徴的な出来事は、23年6月30日を期して世界最古の日刊紙「ウィーン・ツァイトゥング」が紙媒体からオンライン電子版に移行したことだ。紙媒体のメディアは10年には74紙もあったが、22年には53紙に減少した。
新聞を毎日読む年齢層を調査したところ、60歳以上は依然、70~80%だが、14歳から19歳の若者は30%と少ない。若い世代はもっぱらインターネットのオンライン情報に集中し、紙の新聞をお金を払ってまで読む習慣はない。また、「新聞が報じる情報を信頼する」と答えた人は全体の40%にすぎず、60%が情報の信頼性を疑っている。(O)