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【韓国紙】大統領警護員

韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

7月13日、米東部ペンシルベニア州バトラーで、流血し、大統領警護隊(シークレットサービス)に囲まれるトランプ前大統領(AFP時事)

「自分を殺してこそ、国家元首を安全に保護できる」。盧武鉉政権の大統領警護室が2006年8月に発刊した冊子「風の音も見逃さない」には、大統領警護員(ボディーガード)たちの死生観が込められている。

「毎朝、端正に風呂に入り、きちんと髪を整えて下着を新しいものに着替えることは最悪の場合、きれいな姿で自分の死体が収拾されるようにするため」という内容には、粛然とさせられる。

軍人や警察は相手を制圧するために武術を錬磨するが、警護訓練の最優先の目的は、大統領の保護だ。大統領を狙ったテロの危険が感知された時、反撃に先立って自分の身体を大統領の盾にする訓練を繰り返す。

昨年、米共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏を暗殺しようとする銃弾が飛んできた時、秘密警護局に所属する要員たちが反射的にトランプ氏を囲むようにした、その訓練だ。警護訓練を“死ぬ訓練”と呼ぶ理由だ。ボディーガードたちの家族は、大統領を守るために全身で爆弾を覆ったり、銃や刃(やいば)を防ぐ公開警護訓練を見守りながら、涙を流すという。

尹錫悦大統領が高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の逮捕令状の執行に応じず、大統領警護処に所属するボディーガードが岐路に立った。法院(裁判所)が発行した逮捕令状の執行とボディーガードの職業的使命という相反する価値が衝突する空間に閉じ込められて、苦しい選択を強要されている。

彼らは「大統領警護において最も重要なことは国家元首の絶対安全であり、これは大統領警護処の存在価値」という服務守則に従って尹大統領守護のための防御ラインを構築した。

逮捕令状の1次執行に失敗した公捜処は早晩、再び尹大統領逮捕に乗り出す態勢だ。ボディーガードはややもすると国家元首警護の最後の堡塁(ほうるい)という名誉と矜持(きょうじ)の代わりに“大統領の私兵”という不名誉と嘲弄(ちょうろう)を被る状況に置かれた。

16世紀に神聖ローマ帝国の軍隊がローマを攻撃した時、教皇庁が雇用したスイスの近衛隊は数的劣性にもかかわらず、教皇に対する「忠誠誓約」を最後まで守って玉砕した。彼らの犠牲はスイスの傭兵(ようへい)の忠誠心を担保する信頼の資産として残り、後日、教皇庁がスイスの近衛隊だけを雇用する慣行を生み出した。

尹大統領に忠誠を尽くしたボディーガードには、どのような補償があるのだろうか。

(1月8日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

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