古都鎌倉で鶴岡八幡宮に参拝した後、境内前の三の鳥居から若宮大路を南に下り、由比ガ浜まで歩いた。最も華やかな一帯で、食事処やアクセサリーや鎌倉彫の店が並び、目を奪われた。
通りの中央が高くなっていて段葛(だんかずら)と呼ばれ、「日本の道100選」の一つに選ばれている。源頼朝が夫人政子の安産祈願のために造営したと言われる。参道の東側にはかつて幕府や北条氏の屋敷があり、防衛線の役割もしたという。
段葛は二の鳥居で終わり、さらに行くと華やかさが薄れていく。JR横須賀線の下をくぐり、一の鳥居まで来ると海が近く感じられた。マツやサクラの街路樹が見事だったが、畠山重保(しげやす)の墓のそばで思わぬ植物に出合って喜んだ。
ヤドリギだ。エノキの大木が幾つもあり、その梢(こずえ)近くに生えている。群生と言っていいほどだった。このような光景を見るのは初めて。これまで出合ってきたヤドリギはどれも単独だった。
光合成を行う半寄生植物で、ビャクダン科ヤドリギ属。その果実を食べた鳥が種子を排泄(はいせつ)し、宿主に付着すると樹皮の中に寄生根を伸ばす。万葉集では「ほよ」の名で登場し、新年をことほぐ植物とされた。
これを髪飾りとして、1000年の長寿を願うという大伴家持の歌がある。「あしひきの山の木末(こぬれ)のほよ取りて挿頭(かざ)しつらくは千年寿(ちとせほ)くとぞ」。庭の木にほよが付けば家が栄えるとも言われた。葉を落とした樹木がそこだけ緑の塊で、風変わりな景色だ。