トップコラム戦後80年に政治劣化の不安【羅針盤】

戦後80年に政治劣化の不安【羅針盤】

令和7年新年の東京は好天に恵まれ穏やかな正月であった。近くの神社への初詣では夜明け前にも拘(かか)わらず老若男女で賑(にぎ)わい、長蛇の列をなして手を合わせ、頭(おうべ)を垂れていた。帰宅するや家族団欒(だんらん)の御屠蘇(とそ)、御雑煮、おせちと日本のお正月には何とも言えぬ清々しさと安らぎがある。一年が斯くあればと願った。

しかし世界を見れば、ウクライナ、パレスチナの戦火は一向に収まる気配がなく、また、民主主義国家の多くで政権与党が国政選挙に敗れ政治体制が不安定化している。20日のトランプ米大統領再就任とも相俟(あいま)って、今年の世界の安全保障環境は大きく荒れるのではないかと予測する。

わが国の安全には、日米同盟を基軸とした日米韓の緊密な連携が不可欠であるが、トランプ氏の同盟関係への姿勢、韓国の尹錫悦大統領弾劾の行方、日本政治の劣化と少数与党政権の弱体化等々の不確定要素で日米韓の結束力の弱化が心配される。

その一方で、周辺脅威のロシア、北朝鮮、中国は専制主義国家としての独裁政治体制が安定しており相互の軍事協力も進んでいる。これでは付け込まれると危機感を覚える。

今年は戦後80年の節目の年になる。この機に「戦争の悲惨さを忘れることなく反省し、世界とわが国の平和を考える」ことに異論を唱えるものではない。しかし、現代日本の諸問題はこの戦後の始まりに端を発していることを思い起こしてほしい。

軍隊は解体され、政府及び軍の要人は戦争指導者として逮捕され、国のかじ取りは全て連合軍に委ねられた。その占領下で憲法が制定され、敗戦後の日本国の仕組みや法制が定められたのである。

憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して」の諸国民とは、連合軍国家国民であり、国の安全と生存を連合軍に委ねるとしている。従って当時としては憲法にどこの国にもある国防の義務や国防軍の規定がなく、緊急事態に言及する必要がなかった。7年にわたる占領が終わり独立を回復した時が体制見直し、自主憲法制定の好機であったが、なすことなく今日に至っている。

台湾有事は日本有事だけでなく朝鮮半島有事も懸念される状況下、この戦後80年の節目にいわゆる「戦後レジームからの脱却」を真剣に再考し、体制の見直し検討と自主憲法の制定に乗り出すべきである。国会では憲法改正論議が遠のいて政治と金の話ばかりだ。

ロシア、中国、北朝鮮では、戦勝を称(たた)える80年の節目として民族意識、国防意識を高める契機にすることを忘れてはならない。国の在り方、国家戦略を論じないでは老獪(ろうかい)な習近平国家主席、プーチン大統領、金正恩総書記に太刀打ちできぬばかりか、同盟国のトランプ氏にも軽んじられる。日本の政治力の劣化、外交力の低下が心配されてならない。(遠望子)

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