日米両政府が、米国の核戦力などで日本を守る拡大抑止のガイドライン(指針)を初めて策定したという。北朝鮮だけでなく中国、ロシアの核脅威が高まる中で通常戦力だけでなく核の脅しにも対応することが不可欠だ。
中国は南シナ海の岩礁に滑走路や自国の施設を増設してまでも領有権を主張して、ベトナムやフィリピンなど周辺諸国との衝突を繰り返している。目的が単なる領域拡大ではなく、重要な西太平洋海域の聖域化だからだ。
この南シナ海は通商の要路、いわゆる海上交通路(シーレーン)として周辺国においては死活的な海域である。いざとなれば海上封鎖を含めわが国の安全保障にも直結する。
だが中国の大きな狙いは、同海域を聖域としてコントロール下に置き、米国を直接攻撃できる潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を配備して対米戦略の要とすることだ。
これと同一なのが、ロシアによるオホーツク海の聖域化であろう。米国としては同盟国に提供している「核の傘」が無力化しないよう、この両海域には有事の際に備えて攻撃型原潜を配備して監視に当たっている。
南シナ海でも日米欧の海軍が連携して頻繁に同海域を航行し、共同訓練の実を上げているのも「聖域化阻止」の努力の表れだ。拡大抑止のガイドライン策定は石破茂首相の指示を踏まえたものという。岸田文雄前首相が言を左右にして「非核三原則死守」だけの答弁という逃げの姿勢から一歩進んだとは言えよう。