
米国の科学者ベンジャミン・フランクリンは、絹と金属を折り込んだタコを雷雨の真っ只中(ただなか)に揚げ、タコ糸の根元に検電器を接続し雷が電気だと確認した。よく感電死しなかったものだが、後に避雷針を発明しその恩恵を世界に伝えている。
このように発明発見には、目標実現への一途(いちず)な思いが伴うものだ。戦後の日本の自動車産業でも、ホンダの堅牢(けんろう)なスーパーカブや日産ブルーバードには、文字通り、家庭に幸福を運ぶ青い鳥というメーカーの強い思いがあった。企業発展の推進力にもなった。
ところが時代が変わり、業績が悪化している日産の経営の立て直しを進めることを前提に、ホンダと日産が経営統合の協議入りを表明した。世界市場は人工知能(AI)搭載車や電気自動車などの量産競争が激化しており、日産はその波に乗れていないという。
統合を主導するホンダの三部敏宏社長は会見で「世界で勝てる価値をつくっていかなければならない」と。つまりAIやソフトウエアはいわば道具立ての一つで、AIやエレクトロニクスも駆使し、本当に好まれる車づくりを目指すというわけだ。
一人一人の乗り手に対しベストのものをつくろうとする製作者の思い、その工夫こそ日本のものづくりの特徴だ。三部社長は「日産との統合で起こる相乗効果は大きい」と。
後進の技術者の卵や大学の工学部の学生らは「好きな車づくりに今後、参加できるかどうか」その成り行きをじっと見ているはず。