
韓国は紛れもない車社会だが、それでも特に通勤通学では時刻表通りに走ってくれる地下鉄を利用する人が多い。今では路線が増え、ソウル市内を縦横に走り、1、2回乗り換えればだいたいの目的地に行けるから便利だ。日本の地下鉄と比べこれはいいなと思うのは、ホームドアがほとんどの駅に設置され、高さも2㍍以上あるので線路側とほぼ完全に遮られていること。透明で外がよく見え、何より転落の危険がほとんどなくて安全だ。
ところで先日、夜遅くに市内で地下鉄に乗っていたら、突然、車内放送で「乗客の皆さま、こんばんは」という声が聞こえてきた。数年前から地下鉄公社が始めた「感性幸福放送」だ。例えば、こんな言葉が流れてくる。「孤独だったきょう一日の日課を終え、ご帰宅される方もおられるでしょう。遅い時間まで本当にお疲れさまでした。会社の業務でへとへとでしょうが、最後まで頑張ってください。夜遅いので、道中お気を付けてお帰りください」
落ち着いた声の男性乗務員がゆっくりしたペースで話す。すぐ前の座席に座っていた2人組の中年女性が「あら、こんな放送初めて」「いいわね~」と言っていた。話の中身は幾つかパターンがあるようで、時間帯やその日の天気に合わせて変えるようだ。ただし、ラッシュ時などで流すと、逆に乗客たちから「うるさい」「イライラする」などのクレームが来るそうだ。ギスギスした世知辛い世の中と隣り合わせである。(U)