
文科省の調査で2023年度に精神疾患を理由に休職した公立学校の教員が7119人で過去最多だったことが分かった。
勤務年数が3年未満の若手教員がその4割を占め、休職した教員の2割が退職しているという。教員不足の折、由々しき事態である。
調査によると主な要因は「児童生徒への指導」「職場の人間関係」「事務的な業務の多忙さ」などだ。
「児童生徒への指導」では、いじめ対応で加害児童の保護者からのクレーム対応で心身をすり減らすことが多くなったという話を新聞等でよく目にする。教室に暴力的な児童や発達障害の児童が一人いるだけで学級運営は大変になる。
例えば、言葉で伝えても話を聞かない子供を強く叱ったり、廊下に立たせたりすれば体罰と疑われる。時に保護者からのクレームに発展する。30年前と今では学校の置かれている状況は様変わりした。
文科省は教員の負担を軽減しようと、少人数学級制、副担任制や教科担任制などを導入しようとしたり、スクールカウンセラー配置や部活動の地域化など、さまざまな改革に取り組んでいる。だが、不登校、いじめ、自殺など子供たちの心の問題は一向に改善する兆しが見られない。
教員のメンタルヘルスケアなど、対症療法ではなかなか難しい。なぜかと言うと、心の問題は家庭を出発点とする人間形成全般に関わる問題だからである。
評論家の故外山滋比古さんは晩年、家庭が荒れて被害を受ける子供たちの声を代弁し、2016年『家庭という学校』を書き残している。「学校の前に家庭という学校がなくてはいけない」「家庭という学校が危機に直面している」など家庭教育の復権を切々と訴えた。
日本の教育がどこでどう道を間違えたのか。対症療法ではなく、人間形成全般の問題として教育を捉え直す必要がありそうだ。
(光)