
年末年始の帰省で新幹線を利用する国民は多い。新幹線は運行から今年で60年を迎え、日本の高度経済成長を象徴する「国民の足」として再認識されている。
日本の大動脈、東京―新大阪を結ぶ日本初の新幹線「ひかり」号(途中停車駅は名古屋駅と京都駅)により関東圏と東海、近畿圏の移動時間が劇的に短くなった。1992年以降は「のぞみ」号がその役割を果たしている。その一方で、開業当初から運行している各駅停車の「こだま」号の存在感がどうも薄い。

東京から名古屋まで、「のぞみ」は1時間40分で到着するが、「こだま」は3時間かかる。その差にして1時間20分。自由席の通常運賃が同じであるため、「こだま」のメリットはないように思える。
それでも筆者は今年、何度も名古屋や大阪に出張したが、ほぼ「こだま」を利用した。
理由を列挙する。
その一、割安で購入できる。あまり知られていないが、金券ショップで買うよりも、正規で安く購入する方法がある。国内や海外旅行の企画販売をする「JR東海ツアーズ」が提供するチケット「ぷらっとこだま」だ。東京―名古屋間は、「のぞみ」の指定席利用と比べて2490円安くなる。しかも、1ドリンク(最大320円分)の引換券が付いている。
いくつか注意点がある。①当日券がない②指定された時間の指定席しか利用できない③ゴールデンウイークや年末年始は適応外――。
その二、年末年始もフレキシブルに利用できる。12月27日~1月5日は、「のぞみ」が全席指定席となり、自由席が買えない。
「こだま」は通常通り買える。しかも「のぞみ」と比べて自由席の車両が多いので、始発の東京駅から乗ればほぼ座ることができる。
その三、多様な景色を楽しむことができる。「のぞみ」ならあっという間に通り過ぎる熱海(静岡県熱海市)の街や海が一望できる。「のぞみ」の通過待ちで数分停車している間に、小田原城(神奈川県小田原市)や掛川城(静岡県掛川市)を眺めるのも良いだろう。「のぞみ」が素通りする静岡県内の富士山、駿河湾、茶畑、浜名湖など多様な景色をより長い時間楽しみたい人にはお勧めだ。
その四、心地よく過ごせる。筆者は出張帰りの夜、静かな車内でノートパソコンでひと仕事するのが習慣になっている。3時間もあれば、それなりに記事を書き進めることができる。長編映画を観るにはちょうど良い長さでもある。
「のぞみ」ほど混雑していないことも乗り心地の良さと関係している。人混みでストレスが溜まりやすい人にはかなりのメリットではないだろうか。
年末年始に東海、関西方面に帰省する予定がある人は、「こだま」の利用をお勧めする。
(豊田 剛)