
先日、娘の誕生日にレストランを訪れ、家族で食事会を楽しんだ。食事の後にプレゼントを渡してお開きという、ありふれた誕生会だ。ところで、ネパールでは誕生日を迎えた本人が「祝われる側」ではなく「祝う側」になる。
会社の事務所などで社員が誕生日の日は、誕生日を迎えた社員が、休み時間にカジャ(軽食)に誘ってきたり、日頃の感謝の意を込めてお菓子を配ったりと「祝う側」になって、皆に「おめでとう!」とお祝いされる。
この点、ネパールで生活を始めて間もない頃は、祝い事がある時は祝ってもらうことが当たり前と思っていたのが、祝う側になって与えるという慣習の違いに戸惑った。こちらは合わせようと意識してしまうが、人々の「与える」行為は自然に溶け込んでいる。
普段のあいさつでも「ご飯は食べたの?食べて行って!」というようなやりとりが日常茶飯事だ。お言葉に甘えておいしそうに食べていると、ディディ(ネパール語でお姉さんの意)がこちらを見て微(ほほ)笑んでいる姿から、「与える喜び」が屈託なく伝わってくるのだ。
そのようなやりとりもあり、自分自身も祝ってもらう「受ける喜び」よりも「与える喜び」を少しばかりでも実感できるようになってきた。それでも度を越えるのはよくないし、特に「お金」に関わることは過去の苦い経験からも、「貸す」であっても絶対にやめてくださいと、妻に釘(くぎ)を刺されている。(T)