11月26日、総理大臣官邸で第3回自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議が開催された。報道によれば、石破茂総理大臣や中谷元防衛大臣らが出席し、採用状況が特に厳しい任期制自衛官の確保策として、現行の「自衛官候補生」制度を廃止し、給与水準を引き上げた新たな採用枠を創設する案等が、防衛省から示された。
公表された会議資料によれば、この他、退職後の再就職先の拡充、公的資格の取得の促進などに関する関係省庁との連携等の方向性が示されている。しかし、どの施策も従来の制度施策の強化・改善に留(とど)まっており、抜本的な募集環境の改善は期待できない。
本欄(7月16日付)で「陸自の常備任期制自衛官に、全日制の大学生、短大生らを採用」することを提言したが、このような抜本的施策は検討の俎上(そじょう)にも上がっていない。
一方、令和5年3月卒の高校生の進路状況は、文部科学省によれば、大学などの上級学校への進学者が約51%、就職者は47%弱にすぎない。この5割に満たない就職者数は、将来若年人口の減少により加速度的に減少する。自衛官の募集対象人口の激減は避け難い。
他方、日本私立学校振興・共済事業団が9月13日公表の「令和6年度私立大学・短期大学等入学志願動向」によれば、本年度の私立大学の定員割れは59・2%、私立短大に至っては91・5%である。国公立大学でも募集定員以下の学科は驚くほど多い。少子高齢化社会の進展で、この定員割れの傾向は今後さらに進展するだろう。
超高齢化社会に突入し、親は子供の教育より老後の生活準備を優先せざるを得ない。先の自衛官に学生任用の提案は、これら現在の日本が抱える諸問題を多少なりとも軽減する有力な案だ。
このような制度を検討すると、また「学徒動員」などと為(ため)にする批判があるだろう。しかし高齢化社会の年金問題や、国家財政の将来に多少の知識があり、国家国民の安全を真面目に考える人なら、本施策が国家的にも極めて価値が高いことが分かるはずだ。
1億を超す人口で30万未満の国防組織の維持が困難とは世界の非常識だろう。その上、自衛官の処遇は過酷な勤務・任務を考慮して他の公務員より格段に優遇されているわけではない。志願者が少ないのは当然だ。しかも日本国憲法では国民の国防の義務が規定されてない。国民の権利ばかり羅列されている。やはり大東亜戦争敗戦後の占領米軍の押し付け憲法・国体は現代日本の多くの問題点の元凶だ。(遊楽人)