トップコラムヒマラヤ植物の防寒対策【上昇気流】

ヒマラヤ植物の防寒対策【上昇気流】

ヒマラヤの青いケシの群生

東京では日中、晴れた日が多く、暖かくて過ごしやすいが、日が沈むと冷え込んできて、夜間に外出する時には防寒具に配慮する。着込んだと思っていても寒さが身にこたえる時が多。

四季を通して自然界に親しんだ時期があったが、冬、防寒具で最大の恩恵を受けたのはウールだった。晩秋初冬、山では雨が降ることがあり、たいてい吹雪に変わる。雨具を着ていても濡(ぬ)れた。

ウールの下着は濡れても体温を奪わない特性があって非常にありがたかった。カッターシャツもニッカズボンもウールだった。今日では繊維素材の開発が目覚ましく、隔世の感がある。

撥水(はっすい)アンダーウエア「ドライレイヤー」やシート状立体保温素材「ファインポリゴン」など、高い性能を持った繊維が登場して時代の変化を感じさせる。ところで、植物にも防寒対策をするものがある。

ヒマラヤの標高5000㍍の高山では、植物の成長期間が極端に短い。ここに生きるタデ科ダイオウ属の一種、セイタカダイオウは人の背丈ほどの高さになる草。『おもしろくてためになる植物観察の事典』(大場秀章監修、ヤマケイ文庫)で紹介している。

この草には花を保護する「苞葉(ほうよう)」という葉があり、半透明で全体を覆い、円錐(えんすい)形の温室を作っている。雨天や曇天で日中10~15度、晴天で15~25度に保たれるという。気温は低い。このような温室型の植物がヒマラヤには多いそうだ。誰がその知恵を賦与(ふよ)してくれたのだろう。

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