先日、ユダヤ人の友人の孫の結婚式に出席した。友人といっても90歳を過ぎたホロコーストの生存者夫婦だ。
ハーモニカの名手で、よく「上を向いて歩こう」の曲を吹いてくれるご主人と、いつもエレガントで、訪問客をこれでもかというほどもてなす奥さまである。孫の結婚とひ孫の誕生を楽しみに暮らしている。今回は末の孫娘の結婚式だった。
最初、立食のビュッフェスタイルでいろんなメニューを楽しみながら、参席者たちと言葉を交わした。ユダヤ人の結婚式だからなのか、ほとんどの人が黒い服装だ。
しばらくすると、会場の真ん中に造られた「フパ」という天蓋(てんがい)に新郎新婦の兄弟姉妹たちが集まった。音楽と共に両親に付き添われた新郎が入場。続いて両親に付き添われた新婦が登場し、フパの少し手前で止まり、新郎の迎えを待つ。新郎が新婦を伴いフパに入ると、ラビ(ユダヤ教指導者)の祈りで儀式が始まった。新郎と新婦がしたためた手紙の朗読もあった。
最後に互いに誓いのワインを飲み、新郎がワイングラスを足元に落とし踏んで割る。最も幸せな瞬間にも、壊されたエルサレムの神殿を忘れないための伝統だという。
この後、みんなテーブルに着いて前菜とメインの料理をいただいた。若者たちは、料理の合間にダンスに興じていたが、私は友人たちと食事を楽しみ歓談した。
友人夫婦にとって、生きている間に3人の孫の結婚式を見届けることは悲願であった。私は、心からの祝いとねぎらいの言葉を掛けた。(M)