先月末からの数日間、東京は澄み切った青空の下で紅葉が進み、秋たけなわの日和が続いた。とはいうものの、もう12月だ。暦の上でも冬が始まる立冬(11月7日)から4週間近く過ぎている。
立冬の日に季節の変わり目を告げる木枯らし1号が東京に吹き、富士山の初冠雪が観測され、数日寒い日も続いた。しかし、その後も20度超えの日が何日もあって紅葉は停滞したままだったが、やっとヤマ場を迎えたと言える。
秋と言えば、食欲、読書、スポーツ、芸術、行楽など、さまざまなことと連関付けて語られる。果たして、秋から何をイメージする人が多いのか。インターネットで調べてみたが、サンマ、紅葉、キンモクセイなど、調査ごとに結果はまちまちだった。
意外だったのは、ある調査でハロウィーンが第2位になっていたこと。高齢者の仲間入りした筆者にとって、秋の風物詩にハロウィーンが入るというのは驚きだが、渋谷区が当日、渋谷に来ないように呼び掛けたにもかかわらず、前年より20%多い人が集まるほどだから、十分にその資格があるのだろう。
もう一つは、別の調査で虫の声が第2位に入っていたこと。これは筆者も大いに納得する。
真夏の猛暑が残る中、夕方に草むらからコオロギの声が聞こえてくると、「ああ今年も秋が来るのだなあ」とほっとする。だんだん涼しくなって、スズムシやマツムシなども加わると、今でも「秋の夜長を鳴き通すああ面白い虫のこえ」と歌の文句が浮かんでくる。
美しい紅葉、涼しい夜風にくっきり浮かぶ月、暗闇からの虫の声、これこそ筆者の知る日本の秋だ。しかし、猛暑のため遅れてきた紅葉の季節のために、このような風情に浸ることなく「秋」は過ぎ去ってしまった。秋が分散したのか、秋が薄く長くなったのか、短くなったのか。秋が変わったのか。
(武)