トップコラム消えた政界指南役【上昇気流】

消えた政界指南役【上昇気流】

衆院本会議で所信表明演説を行う石破茂首相=11月29日午後、国会内

石破茂第2次政権の飛行ぶりがいささか心許ない。自民党総裁選の前までは石破人気を称揚した「世論」なるものも、首相就任後は手のひら返しで、やれ身だしなみがどうの、やれ座ったままで他国首脳のあいさつを受けるのは外交マナーに反するとか、批判が喧(かまびす)しい。

権力の座に就く者には付き物だが、もっと大局的な見地からの問題提起が今後の国会論議で望まれる。政治には現下の問題対処と同時に、長期的視野に立った施策が不可欠だ。そこが時の内閣の個性であり役割と言える。

日々の政治に忙殺される中、常に長期的展望を失わないよう自らを鼓舞していく“知恵袋”を持たねばならない。それが「政界指南役」といった存在だった。政治的利害を超え、私心を捨てて国のあり方を説き助言する立場でもある。

近年の歴代首相では「首相動静」を見ても、そうした指南役は見当たらない。いったん眼前の俗事を離れ、大局に立って振り返る。

かつては中曽根康弘首相当時の四元(よつもと)義隆氏(元三幸建設工業会長)が挙げられよう。四元氏は鹿児島県出身で、戦前に近衛文麿、終戦時に鈴木貫太郎各首相の親衛隊を務めた国士だった。その生き様は『昭和激流/四元義隆の生涯』(金子淳一著、新潮社)に詳しい。

「私欲が活力の源泉になっていることを否定はしない。しかし、それより大きな欲、大欲、大願、理想を持つこと。政治家や指導者は自分の欲を捨てて国民の為に奉仕する姿勢が重要になる」

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