フィリピンのクリスマスシーズンは、世界最長として知られている。9月ごろから街中にキャロルソングが流れ始め、12月には各地で華やかなツリーが出そろい、祝祭ムードは最高潮に達する。家族との再会や教会でのミサなど、クリスマスはカトリック教徒が大半を占めるフィリピン国民にとって、心に深く根差した宗教行事なのだ。
しかし、都市化やグローバル化の進展に伴い、かつての風景が少しずつ変わりつつある。今年、社会福祉開発省は、クリスマスシーズンに増える路上の物乞いに対し、施しを与えないよう国民に呼び掛けた。
都市部では、空き缶で作ったドラムをたたきながらジープニー(小型の乗り合いバス)やバスに乗り込み、キャロルを歌いながら施しを求める子供たちがクリスマスの風物詩だった。しかしセブ市などではこうした行為による子供の事故を防ぐため、路上での物乞い行為を禁止し、取り締まりを強化する方針を打ち出している。
そもそも大統領令で路上での物乞い行為は禁止されているが、自治体によっては施しを与えた側にも罰金や社会奉仕活動を科す制度が導入されているので注意が必要だ。
しかし、あまり厳しく取り締まっても市民の反感を買うだろうし、誰も殺伐とした雰囲気のクリスマスを望まないだろう。路上で貧しい子供が物乞いする必要のない、充実した社会福祉の実現を望むばかりだ。(F)