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菩提寺の御会式に参加して

日蓮(Wikipediaより)

日蓮聖人の命日10月13日に合わせて、御会式(おえしき)が行われる。夫の菩提寺は1538年創立の日蓮宗単立寺で、40年前は実業家の土光敏夫さんもよく訪れていたと聞く。御会式は信徒にとって重要な行事だが、最近は親戚が集まらない。それを心配する講(信徒グループ)の代表を務める親戚から「来てくれ」と懇願され、二人で参加することになった。

講の代表は96歳。耳が遠いので話すことはできても人の話は聞こえない。代表の話では、夫の母親の祖父は東京・日本橋で大工の棟梁をしていた明治26年ごろ、約150人の信徒を引き連れ、つぶれかかった寺の本堂を再建した功労者。だから、講を閉じたら御先祖様に顔向けできないという。「きょうが最後になりそうだ」(後を頼む)。そんな話だった。

講の参加者は6人。うち2人は独身高齢者だから、その視線は自(おの)ずとわが家庭に向けられる。ただ、わが家が引き継いだとしても、わずかな延命にすぎない。なぜかというと、息子夫婦は日本にいない。日本の墓に入るかどうかも定かでない。

最近、僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳さんの『仏教の未来年表』を読んだ。著者の予想では、全国7万7000ある寺院は住職の代替わりで2060年ごろには、約4万2000に激減する。僧侶が生成AI(人工知能)に取って代わられる、通夜や告別式を省略した直葬が過半数になる、戒名がなくなるなど、すごい未来が書かれている。

一方、葬儀社主導の葬儀ではなく、僧侶が主体となって寺社で葬儀を執り行う「寺院葬」に回帰するだろうとも述べている。広い敷地があっても、そこに来るのは墓参の時だけではもったいない。この場所が宗派を超えて人が集まれる癒やしの空間になればと思うことがよくある。寺院の数は郵便局、学校、コンビニより多い。見方を変えれば、地域再生の切り札にもなり得る貴重な資源である。菩提寺にもそれを期待したい。

(光)

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