トップコラム【上昇気流】君知るや「亡国の音」

【上昇気流】君知るや「亡国の音」

聖書

国は何によって滅びるのか。中国やロシアなど「外敵」の話は多いが、「内敵」はどうだろう。亡国にまつわる歴史が気になって書棚の『中国故事物語』(河出書房新社)を繰ってみた。

中国最古の王朝、夏の17代目の桀王(けつおう)は妹喜(ばっき)という女性に溺れて奢侈(しゃし)の限りを尽くしたため殷(いん)の湯王(とうおう)に滅ぼされた。「夏の王に罪多ければ、天命じてこれを討たしむるなり」(『書経(しょきょう)』)。これが革命の由来である。

殷の30代目の紂王(ちゅうおう)は妲己(だっき)という女性の歓心を得るため「酒池肉林(しゅちにくりん)」の淫蕩(いんとう)を繰り広げ、周の武王による第2の革命で滅ぼされた。紂王が好んだ音楽は後に「亡国の音(いん)」と呼ばれ忌み嫌われた。

故事にこんな解説があった。「『亡国の音』は、滅びた国の音楽であり、また国を滅ぼすような淫靡(いんび)な音楽という意味であるが、今日われわれが耳にするもののうち、これに類するものがないであろうか」。この問いに頭を巡らすと、政治家の性の醜聞が思い浮かんだ。

性には戒めがあった。古代ユダヤの預言者モーセの十戒(紀元前13世紀)には「汝(なんじ)、姦淫(かんいん)するなかれ」とある。この旧約聖書の一節を巡っては、カトリック訳ではこれに加えて「隣人の妻を欲してはならない」という戒めがあり、他の写本訳では「配偶者以外と性行為をしてはならない」ともあるそうだ(ウィキペディア参照)。

「千丈(せんじょう)の堤(つつみ)も蟻(あり)の一穴(いっけつ)より崩れる」と韓非子(かんぴし)の言にある。政治家の性倫理を軽んじる風潮は「亡国の音」と言うべきだろう。

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