米国では選挙期間中、自分が支持する候補の名前を書いた「ヤードサイン」と呼ばれる政治看板が、住宅の庭などに掲げられる。米選挙の風物詩とも言えるものだ。しかし政治の二極化が深まる中、今回の大統領選ではこの政治看板が盗難・破壊されたという報告が増加した。
ミズーリ州スプリングフィールドのある女性は、自宅の前庭からハリス副大統領の看板が何度も盗まれることにうんざりし、GPS装置を取り付けた。盗まれた後、それを追跡した結果、青いセダンタイプの車にたどり着いた。
そこにいた若い男性は、女性に対し彼女の看板を含む多数の看板を盗んだことを認めた。彼は「もし取り戻したいなら、そこにあるよ」と言いながら、ハリス氏の看板でいっぱいのトランクを指し示したという。
ソーシャルメディアには、監視カメラに映された政治看板の盗難、破壊の場面が幾つも投稿された。マサチューセッツ州の女性は、トランプ前大統領支持者の敷地に侵入し、看板を取り去ろうとしたが、盗難対策のため看板は茂みにくくり付けられていた。悪戦苦闘した挙げ句、何とか引き抜き、それをフリスビーのように放り投げた後、走り去って行った。
その強烈な憎悪には、身震いさせられるものがある。報道によると、こうした看板に放火したり、排せつ行為をする者までいたというから驚きだ。
ヤードサインはその地域の支持傾向を視覚的に知る重要な手掛かりともなるものだ。しかし、こうした盗難・破壊行為によって、むしろ政治的分断を映す鏡となってしまっている。(Y)