Homeコラム【上昇気流】福島復興への「偉大な一歩」

【上昇気流】福島復興への「偉大な一歩」

「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩だ」――。人類史上初めて月面に降り立った米宇宙飛行士、ニール・アームストロング氏の言葉として知られる。

脳血管障害を患った60歳代の男性は再び歩行が可能になった時、気流子にこう言った。「人類にとっては普通の一歩だが、私にとっては偉大な一歩だ」。忘れられない言葉である。

男性は仕事中に突然、脳出血を発症し病院に救急搬送された。2カ月後に車椅子に座れるようになり、リハビリに励み、ようやく自力で一歩踏み出せた。まさに偉大な一歩だった。

東京電力は今月、福島第1原発の燃料デブリを初めて回収し、廃炉への一歩を刻んだ。燃料デブリとは原発事故で原子炉内の冷却機能が失われ、核燃料などが溶けた後に冷えて固まったもので、これを取り出さないと廃炉の道筋が描けない。

燃料デブリがある格納容器の内部は放射線量が非常に高く、作業は全て遠隔操作で難航を極めた。デブリは推計880㌧。グラムに換算すれば億単位だが、回収したのは数㌘。それでも「前進したのは評価したい」と地元の人は語る。

「マイナスをプラスへ、発想の転換」(伊沢史朗・双葉町長)を合言葉に、沿岸部で世界的な廃炉技術や原子炉の遠隔ロボット開発など新たな産業基盤を構築する「福島イノベーション・コースト構想」に取り組む。デブリ回収は小さな一歩だが、復興にとっては偉大な一歩である。

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