韓国の出生率低下が凄(すさ)まじい。2018年に合計特殊出生率1・0を下回り、23年にはOECD加盟国中最下位の0・72に低下した。少子化の要因の一つとして、女性の急激な社会進出と高学歴化が指摘されている。
韓国の女性の就業率と出生率の推移をグラフにすると、両者の相関関係は一目瞭然。韓国統計庁によると、女性就業率は1970年38・2%から、2023年61・4%に。女性大学進学率は同3・4%から、同78・3%に急上昇。一方、合計特殊出生率は同4・53から、同0・72に激減した。
背景には過去、歴代の左派政権が採った極端な男女平等政策がある。金大中政権の時には女性省を設置、国会議員比例代表議員30%を女性にするクオーター制導入など、女性政策に力を入れた。
もう一つ、政府による家族計画も影響している。自治体国際化協会のリポート(「大韓民国における少子化対策」)が示す、韓国政府が掲げてきた家族政策のスローガンが実に興味深い。
出生率5・0以上の1960年代は「計画的に出産し、立派に育てよう」。70年代「娘・息子の差別なく2人だけ産み、しっかり育てよう」。80年代には「2人でも多い!」となる。
政府の人口抑制が効き、83年には人口置換水準の2・08まで落ち込む。90年代以降は出生抑制から出生促進に方向転換。2000年代「お父さん!一人は嫌です。お母さん!私も弟・妹が欲しいです」。10年代以降は「一人ですれば大変な育児、一緒にすれば心強い育児」「育児は一心!子供は大きな希望!」と、出生促進のスローガンを掲げることになる。
韓国は06年以降16年間で少子化対策に約280兆ウォン、日本は1995年以降30年間で66兆円を投じたが、「少子化の罠(わな)」にはまって抜け出せていない。両国の少子化の流れを辿(たど)れば、政府の人口政策が正しかったのかどうか。その時々で、身勝手な要求を女性たちに押し付けてきた結果であろう。
(光)