先日、釜山から上京してきた韓国の友人に誘われてソウルの東大門へ行った。夕飯のお目当ては釜山にはあまりないという鶏一羽(タッカンマリ)。内臓を取り除いた鶏を丸ごと鍋に入れ、長ネギ、ニラ、ジャガイモなどと一緒に煮て食べる韓国を代表する料理の一つだ。地下鉄の駅から少し歩いた路地を入ると、鶏一羽の専門店が数件並ぶ界隈があり、週末だったこともあって人でごった返していた。そのうちの一番の老舗だという店に入った。
肉をちぎって小皿に取り出し、あらかじめ作っておいた唐辛子ベースのタレにつけたり、そのままキムチと一緒に食べるとうまい。友人はかつて釜山でも鶏一羽の専門店を開業したいと考え、店主にこの店独自のレシピを教えてもらうにはどうしたらいいか尋ねたところ、自分の店を数カ月手伝いながら1000万ウォン(約90万円)を支払うように言われたという。当時はまだ若く、資金がなく諦めたそうだが、今もやりたそうな顔をしていた。
隣のテーブルには若い日本人女性のグループが座っていた。韓国の鶏肉料理で日本人に馴染(なじ)みがあるのは参鶏湯(サムゲタン)やフライドチキンだろうが、最近は鶏一羽も人気で、隣の女性たちもSNSで調べて来たと言っていた。店内の壁に「外部から食べ物持ち込み禁止」の張り紙がある。この付近はおいしい焼き魚の店が多いことでも知られる。どうやら焼き魚を買って、その足で鶏一羽の店に入って食べる、チャッカリ客が後を絶たないようだ。(U)