10月の中旬に、九州の田舎に帰った。農家の主(あるじ)として、水田を守り米を作っている同級生から「今年の米は美味(うま)いぞ」と、新米をもらった。
おいしい水で米を研(と)ぎ、釜戸で炊いていた母を思い出す。ほっこりとしたご飯を食べながら、「長引く米不足 揺らぐ主食」、「新米31年ぶり高値」と書かれた新聞記事が頭を過(よ)ぎった。そこに総務省が、今年の米の値上がり原因を二つ挙げていた。
一つは高齢者の米離れであり、これはスーパー等で安くて手軽に食べられる、パンや調理済みの麺類にあると。もう一つは昨年の猛暑で、5年産米の品薄と、南海トラフ巨大地震情報に伴う米の買い溜(だ)めが重なったことや、外国人観光客の増加で米の需要が増加していると。
日本人の最新の食料自給率は、カロリーベースで38%、生産ベースで63%と発表され、これは先進国としては最低水準と言われている。食料生産の基本要素は三つある。一番は、農地・農業用水等の農業資源の生産基盤にあると。そして二番は農業生産を担う農業者にあり、三番目は収量や生産性を向上させる栽培技術や、品種改良等の農業技術にあると。
農地や農業者を維持し確保する基本政策を、真っ向から壊しているのが「減反(米の生産調整)」政策だ。昭和46年から、農水省とJA農協は米の需要が毎年減少するとの前提で、毎年10万㌧分の減反をして農家に補助金を出してきた。
平成30年に減反政策は廃止されたが、減反は今も継続されている。これはJA農協の米取引手数料として、大きな利益につながっている。今回の米不足で、備蓄米を放出しないのは生産者保護政策といい、減反で今も政府は約3500億円の補助金を出し、米の生産量を制限している。
今や減反は、水田面積の4割に及び、日本の米生産は米国、中国に追い抜かれている。補助金を出して実施した減反政策は、消費者に大きな負担を課した農業保護政策と言える。減反政策を止めれば米不足は解消に向かい、「瑞穂の国」実り豊かな日本に生まれ変わることができる。日本は「米」作りにより皇紀2684年の、世界に誇れる歴史と文化を持っている。日本人の一生は、米に始まり米に終わる。「瑞穂の国」の衣食住を、今こそ家庭、学校で教え、自虐史観から目覚め、日本を元気にする。
今年も各地で「抜き穂祭(ヌキホサイ)」が執り行われている。米は一年に一作であるが、米を世界に輸出できる政策に政府は大きく舵(かじ)を取る時だと言いたい。米文化、「瑞穂の国」に。(呑舟)