11月に入り、パリ中心部の車の通り抜けができなくなった。車の利用者は、仕事や個人的用がない場合、パリ中心部を避けて車を走らせるしかない。理由はパリ中心部の騒音と排ガスによる公害を削減するためだ。
この交通制限の旗振り役は環境対策に熱心な左派のイダルゴ市長で、すでに自転車レーンを大幅に拡充、速度制限を強化し、排ガス基準値を超える古い車のパリ市内乗り入れも制限されている。今回、通り抜けが禁止になったパリ右岸中心部の1区から4区の通称サントル地区では住民、バス、タクシー、救急車や消防車、警察車両以外が規制の対象だ。
友人のルイスは、日本から友人一行がパリ観光に来るのに、規制がうるさいので車で案内するのを諦めて、地下鉄での移動に切り替えることにした。すると「パリの地下鉄はスリが多いことで有名だ」と、車での案内を強く要求され困っている。
欧州では大都市中心部の多くで車両の乗り入れ制限が導入済みだが、さまざまな不都合が生じている。さすがにパリ左岸サンジェルマン大通りやパリの真ん中を流れるセーヌ川沿いの道路通り抜け禁止は見送ったが、すでに環状線ペリフェリックは渋滞が多くなっている。
新型コロナウイルスの感染拡大で、パリ市民が田舎に移動したことも影響し、仏国立統計経済研究所(INSEE)によると、2010年以降、パリの人口は減少している。さらに温暖化ガスも騒音も抑えられる電気自動車(EV)やハイブリッド車が増えているため、今回の交通制限を時代遅れと批判する声もある。(A)