北朝鮮の動きがこのところ特におかしい。金正恩体制の焦りやイラ立ちが顕著だ。ウクライナ最前線への人民軍派遣も、先に締結されたロシアとの軍事協力強化の一環以上に北側の深刻な内部事情が反映しているのではないか。
最近、首都平壌の上空での無人機を使ったビラ散布に北が強く反発しているのもその一つだ。これまでは風船によるせいぜい非武装地帯周辺の散布で済んだが、お膝元での最高指導者批判はただ事ではない。
世界日報のビューポイントでは宮塚コリア研究所代表の宮塚利雄さんが「韓国軍が飛ばしたのなら、紛れもない宣戦布告ではないか」と驚くのも無理はない。これに限らずこの閉鎖国家にも外からさまざまな情報が浸透してきている。正恩氏自身の心身状態も懸念される。
さらには深刻な経済状況や食料不足が追い打ちをかけ、人民軍のロシア傭兵化もそうした体制動揺に対する外部転嫁、体のいい口減らしの側面もうかがえる。
問題なのはこれがウクライナだけで済むのかということだ。台湾有事の際に中国、ロシア、北朝鮮の連携で北海道への挑発的な陽動作戦を行うのではないかという臆測は絵空事ではない。
その意味では欧州もアジアもない。「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」は歴史的地勢的理由で現実的でないという指摘もある。しかし、その危機を見すえ、両地域の違いを超えた何らかの形でアジアにおける集団安全保障の枠組み創設の検討が必要だろう。