
ベトナム人はよく肉を食べる。
ローカルの市場に行くと、大きな肉包丁でカットされたばかりの豚や牛のブロック肉がぶら下がっている。
鶏は生きたまま、そのまま売られるケースが目立つ。客も手慣れたもので、鶏の足首をつかむと逆さまにしたまま持ち帰る。鶏を手にバスに乗り込む人もいたりして、ベトナムのバスは結構、生活臭が濃厚だ。時折鶏は、前の乗客のお尻をつついたりもする。
なお、ベトナムで舌鼓を打つ肉料理は、すりニンニクが入った辛いタレに漬け込んで七輪(しちりん)で焼くベトナム風焼き肉ボー・ヌンだ。レタスで包んだり、そのまま食べてもうまいし食が進む。店や地方によって味付けは千差万別。肉は結構な固さなのに、ベトナムでの人気度はトップクラスだ。
ボー・ラロットという、牛ひき肉をロットという葉に包んで食べるのも結構いける。
ベトナムの1人当たり国内総生産(GDP)は日本のほぼ10分の1、約4000㌦との数字からすると、肉食志向が強い。ベトナム人の肉の平均的消費は、日本人と変わらない量だ。
この点、タイやインドネシアの肉消費量は、ベトナムに比べ有意に少ない。これは経済力の差では説明がつかない。タイの1人当たりGDPは8000㌦とベトナムのほぼ倍だし、インドネシアはベトナムと同程度だ。
考えられるのは宗教の違いだ。インドネシアの国民的宗教となっているイスラム教は豚肉がNGだ。タイの国民的宗教は上座部仏教だ。仏教は肉食を禁じるものではないが、それでも肉食は忌避されがちだ。(T)