
全国各地で新そば祭りが開かれている。長野県の松本市ではこの連休に行われ、大勢の観光客がやって来て市内の店舗には長い行列ができたという。このほか、山形県、福島県はじめ産地でイベントが相次ぐ。
長野県方面にドライブしてきた友人から、安曇野産のソバの実を使った「半なま」の「松本城下町そば」を土産にもらった。「新そば」の表示がある。実の皮を取って粉にした白っぽいそばだ。
ゆで方が決め手なので時間を守る。いつも食べている乾麺と何となく違うが、違いは歯触りと風味にあるようだ。日本人にはそば好きが多い。それを象徴するのが都内での立ち食いそば店舗の多さだ。客は女性より男性が多い。競争が激しいのか、味も洗練されてきている。
そばこそ「日本人のソウルフード」と言うのは、地球のマグマを研究してきた地質学者の巽好幸さん。自称食いしん坊で、各地の食材や料理と、それを育んできた地球の営みとの関係を探求してきた。
その成果が著書『「美食地質学」入門』(光文社)だ。「蕎麦=火山」の等式があるという。そば処(どころ)は火山性土壌にあり、ここでは他の作物は育たない。ソバだけが粘土鉱物に固定されたリン酸を吸収できるからだという。
日本列島には火山が密集し、山麓は標高が高くて冷涼。取り囲む山々の美しさが、不毛地帯の育む作物の美味(おい)しさを演出する。縄文時代前期の遺跡からもソバ花粉が発掘されている。太古からなじんだ食材なのだ。