トップコラム【上昇気流】映画好きだった安倍氏の選挙

【上昇気流】映画好きだった安倍氏の選挙

記者会見する安倍晋三元首相=2020年8月29日、首相官邸
記者会見する安倍晋三元首相=2020年8月29日、首相官邸

6戦6勝。2012年に安倍晋三元首相が自民党総裁に返り咲いて以降、首相退陣までの約8年間に行われた国政選挙の成績だ。安倍氏は選挙にめっぽう強かった。なぜだろうと改めて考えてみた。

アベノミクスが経済を活性化させ株価を押し上げ、雇用を生んだ。「戦後レジームからの脱却」という保守路線を掲げる一方、現実の政策では女性の活躍推進などリベラルなところがあった。理想と現実のバランス感覚を指摘する声もある。

ただ選挙というのは、その時の勢いや空気が大きく左右する。安倍氏は、そんな空気にも鋭いセンスを持っていた。だから選挙の「ストーリー」を重視した。

安倍氏は歌舞伎ファンの小泉純一郎元首相の劇場型政治を傍で見てきた。安倍劇場は小泉劇場のような派手さはないが、観客の微妙な心理に訴えるものを持っていた。安倍氏は大の映画好きで引退後は映画監督になるのが夢だった。映画を見ながら、昭恵夫人に「俺だったら、こう撮るのにな」などと言っていたという。

衆院が解散し事実上の選挙戦に入った。関心はいわゆる裏金問題に集中し、安全保障や地方創生など本来争点とすべき問題が霞(かす)んでいる。予算委員会を開いて、この点も議論してほしかった。

しかし石破茂首相は、自民総裁選での発言を翻し早期解散を選んだ。ぎりぎりの選択だったと思われるが、ストーリーとしては相当厳しい。「俺だったら、こうしたのにな」と安倍監督は思っているだろうか。

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