トップコラム【上昇気流】北極の環境変化

【上昇気流】北極の環境変化

建造中の北極域研究船「みらいⅡ」の完成予想図(海洋研究開発機構提供)

「世界で最も速く温暖化が進む北極では、既に生態系や人々の生活に変化が起き始めた。それは、日本がそう遠くない未来に直面する現実でもある」(小紙10月8日付「66°33’N 北極が教えるみらい」)。

連載の第3部は、未来が見える場所として北極の環境変化を探っている。カナダ・ヌナブット準州の2022年の報告書によると、ハドソン湾に晩秋にやって来るホッキョクグマは5年間で27%減少した。21年時点で618匹。

1980年代と比べ半減したという(小紙2022年12月29日付)。2100年までに絶滅するだろうという予測もある。温暖化で氷が解け、氷上で餌のアザラシを狩る時間が大幅に短縮しているからだ。

2012年と14年に北極点を目指した冒険家の荻田泰永さんは『考える脚』(KADOKAWA)の中で氷上を行く恐ろしさを記した。氷の下では海流が渦巻き、海氷を破壊し、引き裂いて割れ目を作っているからだ。

冒険家の植村直己がカナダのコロンビア岬から北極点へ出発したのは1978年3月。そりを引く犬が、氷の割れ目で海水面に落ちて危なかったが、それでも荻田さんの時と異なって旅は可能だった。

世界の各地で、温暖化の影響で異常な熱波、豪雨と豪雪、森林火災などが頻発している。人間が暮らす環境としての地球はもう限界に来ている。人間の活動が原因となったこの問題に責任を持つのは誰なのか。われわれ以外にはいない。それが問われている。

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