
イスラエルでは2日の日没、ロシュ・ハシャナ(ユダヤ新年)を迎えた。ユダヤ暦で5785年だ。
新年を祝う2日間の祝日とシャバット(土曜休日)で3連休になるので、その前に買い物をとスーパーに行ったら、鶏肉がなかった。日本の年末を想像すると、人々が大量に食料を買うのは分かるが、なぜ鶏肉ばかり?と思ってしまう。
よく考えてみると、連休が終わって1週間後は、ヨム・キプールと呼ばれるユダヤ教の大贖罪(しょくざい)日だ。この日の前に、多くのユダヤ人がカパロット(ヘブライ語で「償い」)というユダヤ教の儀式で鶏を使うのだ。
超正統派ユダヤ教徒が住むエリアに行くと、ユダヤ教徒たちが生きたままの鶏を持って、頭の上で振り回している光景に出くわす。自分の罪を鶏に移すカパロットの儀式だ。男性は雄鶏(おんどり)、女性は雌鶏(めんどり)を使う。妊娠中の女性は自分用とお腹(なか)の中にいる女の子や男の子の分も含め3羽の鶏を使うという。一人ひとりに鶏1羽が必要なのだ。これでは、スーパーに鶏肉が並ばないわけだ。
カパロットでは、鶏だけでなく白い布で包んだお金を代用することもあるそうだ。旧約聖書の詩篇やヨブ記の聖句を暗唱しながら、頭の上で3回回し、その物がその人の代わりになることを宣言する。その後、ほふられた鶏やお金は、生活困窮者に寄付されるという。近年では、動物保護の観点からお金を使う人が増えているそうだ。
新年の前日には、イランから多くのミサイルが飛んできた。テロ組織との戦争は1年を超え、ユダヤ人の友人の息子たちは今も戦地で戦っている。来年は喜びで新年を迎えられることを願う。(M)