
ホームレス(路上生活者)には「負の5則」というのがある。5則といっても決まりでも定めでもない。学者が唱えたものでもない。ざっくり言えば、五つのマイナスの共通項で、気流子が東京都内でホームレス支援に関わっていた時に勝手に名付けた。
第一に「あいさつをしない」。人との関係を断ち切り自分の殻にこもっていて、こちらからあいさつしても返答がない。第二に「我慢ができない」。職を転々とした人が多かったが、その理由の大半は仕事の中身でなく人間関係で我慢ができなかったからだ。
第三は「ルールを守れない」、第四は「掃除ができない」、第五は「自炊ができない」というものだ。就労支援を受けて資金を貯(た)め、アパートに移っても部屋の中はゴミ屋敷という人がいた。ゴミ出しのルールが守れず、苦情を言われ、それ以来、部屋に溜(た)めこんだ。掃除の仕方も知らなかった。
「自炊ができない」は意外かもしれないが、コンビニ弁当ばかりで偏食に陥り、病気になって仕事ができなくなったケースが少なからずあった。いずれも子供の頃の躾(しつけ)の大切さを想起させた。
「負の5則」を思い出したのは、石破茂首相が就任会見で「五つの守る」を唱え、その第一に「ルールを守る政治」を挙げていたからだ。「ルールを守りましょう」は、まるで幼稚園である。
こんな政治が続けば、日本はホームレスならぬ「ネーションレス」(国家消滅)に陥りかねない。そんな危惧が頭をよぎった。