来年わが国は、大東亜戦争で敗戦して80年を迎える。
思えばわが国は、明治27年の日清戦争、明治37年の日露戦争、大正3年の第1次世界大戦そして昭和12年からの大東亜戦争と、大国と世界を相手にして戦争を戦った。わずか51年間で、4回もの戦争はなぜ起こったのか。どこと戦ったのか。
80年間平和で、今の豊かな日本があるのは、度重なる戦争で国のため、家族のためにと命を懸けて戦った多くの若者がいたことを語る人も高齢化し、真の歴史を学ぶことができなくなった。
先日、電車の中で「日本は、アメリカと戦争したの?」と話している高校生を見て、驚いた。先週の「羅針盤」で書かれていた、連合国軍総司令部(GHQ)の対日占領政策「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」と、「報道規則30項目」が今の学校教育でも守られていることが多い。
今やわが国は、安全保障上戦後最悪な環境下にあると、多くの国民は心配している。さらに地球温暖化による風雨災害に見舞われ、エネルギーや食料不足等の経済安全保障上の問題も大きな脅威である。この現況を政治家はどう考えているのか。このたびの自民党総裁選に出た9人の候補者から、具体的な戦略的施政方針は聞こえなかった。
中国は台湾統一のために、多くの訓練場を設けて、ヘリコプターや強襲揚陸艦による侵攻訓練を実施している。台湾有事は日本有事と言うのなら、具体的にどうするのか。日米同盟による「抑止力を強化する」と新総理は言っているが、全く具体性は見えない。
ウクライナは2014年、わずか数日でクリミア半島を失った。ロシアのプーチン大統領は22年2月の軍事侵攻も数日でウクライナを攻略できると考えていたのだろう。ところがウクライナは、14年の反省から防衛装備や訓練はもちろん、サイバー攻撃に対する反撃能力を備えて、ロシア軍に対し2年半も抵抗している。これは軍事的な双方の指揮官(大統領)の判断間違いといえる。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアの侵攻前のプーチン大統領の動きを甘く見ていた。米国からの情報に対しても、侵攻はないと考えていた。もし、来るなら来い。10年前とは違って、来たら倍返しをする。ミサイルはすべて撃ち落とすと抑止力を、プーチン大統領に示せば、ロシアも動いても無駄かと思い侵攻はなかったと思う。さらに米国や欧州連合(EU)がウクライナを支援することで、経済的な懲罰的抑止も効くことになる。
今回はロシア、ウクライナ両国指揮官の判断ミスから、抑止力がお互いに効かなかった。台湾有事に備えて、ロシア、ウクライナから情報戦・世論戦を学び、中国に対する真の抑止力を備える時である。(呑舟)