
値上げラッシュの秋となった。10月から食料品2900品目超が値上げとなるほか、夏の異常気象により、米や野菜が高騰している。先日、東京大学が来年度から年間授業料10万7000円の値上げを決めた。値上げは20年ぶりという。
諸物価の高騰、設備の老朽化、人件費の拡大に加え円安など、大学財政はどこも厳しい状況にある。大学運営費交付金などは法人化後の2004年から13%も減っている。
国際間の大学競争は激しさを増す中、むしろ20年も値上げをしなかったのが不思議なくらいだ。
東大について言えば、入学者の6割が首都圏出身。しかも難関私立中高一貫校から東大に入学する高所得層が多い。大学側は値上げに当たり、授業料全額免除対象を世帯年収400万円以下から600万円以下の学部・修士生まで拡大するとしている。値上げを理由に東大を断念するとはとても考えにくい。
すでに東京工業大学、東京藝術大学、東京医科歯科大学、千葉大学、一橋大学、東京農工大学などが値上げをしており、地方の大学でも値上げを検討するところも出てくる可能性がある。
ただ、近年は奨学金制度が随分充実してきている。低所得者世帯向けには返済不要の給付型奨学金や多子世帯対象の奨学金などが来年度から始まる。
「高等教育修学支援新制度」。いわゆる大学授業料無償化である。その他、国が授業料をいったん立て替え、卒業後に一定の年収に達した時点で返済をスタートさせる「出世払い型奨学金」が始まる予定である。
大学の授業料無償化については、無償化の対象をもっと広げていくべきだとの声もあるが、経済的理由で大学進学を断念せざるを得ない状況はほぼ解消しつつある。
親は子供のためなら苦労をいとわないものである。そんな親心を損なわない程度にとどめておく方が社会はうまくいく。
(光)