トップコラム【上昇気流】英国が石炭火力を全廃

【上昇気流】英国が石炭火力を全廃

運転を終了するラトクリフ・オン・ソア発電所=10月19日、英中部ノッティンガムシャー州(AFP時事)

一昔前、小学校の教室に暖房器具としてあった石炭ストーブ。石のような黒い塊が燃え盛るのを不思議な心持ちで見ていたのを思い出す。

英国では最後の石炭火力発電所の運転が終了した。英政府は今、温室効果ガス排出「実質ゼロ」の目標を掲げており、今回の措置はその一環。1882年に世界初の石炭火力発電所を設けて以来の歴史に終止符が打たれた。

英国は産業革命の発祥地。ワットが1769年に蒸気機関の改良を行って実用化し、石炭を主燃料に交通機関や工場で使用。大量生産も可能になった。商品市場と原料供給地として広大な植民地を急速度に開拓せしめ、世界の英国に。

さらに「1871年以後、法律によって制定された祝祭日の増加と、週五日半の労働日の広い範囲にわたる普及とによって、より定期的な、明確なパターンの休日ができ」(川北稔編「『非労働時間』の生活史-英国風ライフ・スタイルの誕生」)「コークスのなかの祝祭都市」(同)と呼ばれた。

今回の石炭火力全廃は、世界の文明史のダイナミズムを見る思いでなかなか感慨深い。火の発見から現代まで何十世紀もかけ化石エネルギーを人類文明の基本に据えるまでになったが、その化石エネルギーにも限界が見えた証左だ。

今後の人類文明は宇宙開発、AI(人工知能)、海中探査など、それを支えるのに前世紀までは考えられなかった莫大(ばくだい)なエネルギーが必要。それを生み出すため人類の英知が試される。

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