
テレビで相撲を見ることが多い。スポーツ中継だからアナウンサーが必ずいる。彼らは力士の昇進に関心を持つことが多い。特に相撲の場合、場所ごとに力士の番付が変化するのは当然だ。
アナウンサーが「○○は小結に昇進できるでしょうか?」と相撲解説者に問う。その時の解説者(全て力士出身)の反応が興味深い。解説者は昇進の話題に強い関心を示さない。「昇進がどうこうよりは、一番一番の取り組みが大事ですよ」などと答える。
「番付に関心を持つアナウンサー」と「勝負の内容にこだわる解説者」の微妙な違いが面白い。アナウンサーが力士の昇進を決めるわけではない。対して解説者は元横綱の場合もあるから、昇進したことはあるし、親方として現役力士の昇進に関わったこともある。
経験のないアナウンサーが昇進の話に熱心で、経験のある元力士の解説者が昇進の話題には歯切れが悪い。そこに興味を引かれる。
文壇には「作家と批評家」の対比が存在する。作品を酷評された作家は批評家に向かって「四の五の言う前に、小説を書いてみろ」と言う。経験者が言うのだから一理はある。半面、「作家の批評は面白くも何ともない」という事実も厳然と存在する。
相撲であれ文壇であれ、役割はそれぞれだ。相撲経験のないアナウンサーも、テレビ放送の場面では一定の役割を果たしている。そういえば、相撲ファンの大多数が相撲経験者ではない。その辺の塩梅(あんばい)も面白い。