
中国の日本水産物の禁輸緩和を、水産業者が歓迎するのは当然の話だ。しかし一方で、中国で人気のウニやノドグロなど高級食材の値段が上昇し、国内の消費離れを懸念する声も少なくないようだ。
中国の禁輸では、行き場を失ったホタテやナマコに注目が集まったが、ノドグロの人気も高いのには驚く。日本海で多く獲(と)れるノドグロは20年ほど前から国内で人気が急上昇。今ではアジアを中心に海外にも広まっている。
中国・香港が禁輸を続ける中でも、日本の水産物人気は衰えていない。仲卸業者も海外への輸出に力を入れるようになっている。NHKの福岡放送局のウェブ版が昨年5月、福岡県の長浜鮮魚市場で、福岡市の仲卸業者に雇われた中国人の仲買人が、次々と高値で魚を競り落としていく様子を伝えている。
仲買人は「今回競り落とした魚は、香港のホテルや飲食店に出荷します」と言っていた。本格的に輸入が解禁されれば、日本の水産物が中国向けにどんどん高値で競り落とされていく可能性は高い。
そうなると、今でも値が張り、庶民にはなかなか手が届かないノドグロなど、日本海側にでも行かなければ食べられない、ほとんど幻の魚ということになりかねない。
関係業者は儲(もう)かるからいいが、国内の消費者のことも考えてほしい。もちろん、ノドグロだけが魚ではない。しかし日本で獲れ、日本人が味を発見した魚だけに、食べられなくなったとしたら悔しい話ではないか。