27日投開票の自民党総裁選が終盤を迎えた。各種世論調査からは小泉進次郎氏、石破茂氏、高市早苗氏の3強の争いとなっている。
告示後の、特に公開討論会では、許された発言時間は短くても、各候補者が秀でた答弁力の片鱗(へんりん)を見せている。一方、例えば、核ミサイルの脅威や拉致問題で、北朝鮮の金正恩氏とは若いリーダー同士であることを活(い)かして交渉する、と無責任かつ空虚な発言を行った小泉氏に、やはり今回は未来に向けた経験のワンステップとせよ、と思わせた場面もあった。
いずれにせよ、9人が束となって腰を据え、政権構想や、政策課題への対応を訴える15日間は、総じて国民の政治リテラシー向上に貢献している。
外相、党幹事長を含む政権幹部による一斉地方巡回は、政治的空白も生み出した。中国による領空、領海侵犯に、毅然(きぜん)とした危機管理対応ができなければ、それを既成事実として侵犯の度合を高めてくる国防上のリスクがある。
総裁選直後に行われそうな解散総選挙の顔選びから、衆院議員らは投票先を決めがちだ。だが、国家危機管理の最高責任者を選ぶために一票を投ずることの責任の自覚を、再度促しておきたい。
お金をかけない総裁選にするとの選管(委員長・逢沢一郎衆院議員)の方針と関連し、その具体的ルールの通告前に、全国の党員多数に郵送された高市早苗氏の国政報告リーフレットが問題となった。だが、選管が注意したにもかかわらず、総裁の岸田文雄氏が選管の権限を越えて、追加対応を指示し、党ガバナンスの不透明さ、未熟さを浮き彫りにした。
党が告示前に総裁選について党員らに情勢調査を行ったとし、出版社系サイトが、これに基づく元大手新聞記者の署名記事を発表した。だが、選管は、党としてそのような調査は行っていない、と文書で打ち消す対応にも追われた。
党青年局・女性局主催の公開討論会では、党員票の特に決選投票での比重の維持への要望が出され、一部候補者らはオンライン投票導入をもってと、実現に積極的な回答を示した。
しかし、そもそも本人の自覚を伴って入党手続きが行われたのか、また名簿が正しく作成、管理されているのか、との深刻な課題にも改めて直面させられた。
日本国政府の次期首相を実質的に決めるという、重大な意味を持つ党総裁選。だからこそ、政治資金問題の時から指摘されている外国人資金の流入リスクを含め、その正しい在り方は本来、党ガバナンスの点検にさかのぼって、改善を積み重ね、その成果を反映させなければならない。
特定の宗教法人との関係断絶、という憲法違反が指摘される措置を後から正当化するような党ガバナンスコードの場当たり的な追記も、一昨年来、放置している。これに付け込むがごとく、一部メディアが自民党とその法人との関係を問う報道を行っている。
そうではなく、法の下の平等、信教の自由、などの基本的人権への抵触を自省しながら、総裁候補者らは、憲法に基づく党の在り方から抜本的に刷新する姿勢が必要だ。(駿馬)