【上昇気流】デブリ取り出しを中断

福島第1原発(Wikipediaより)

東京電力福島第1原発事故で格納容器まで溶け落ちた2号機の核燃料(デブリ)の試験的取り出し作業。30~40年かかるとみられる廃炉のための第一歩だが、再び中断された。事故があった3基からデブリを取り出すのは世界でも初めてのこと。

東電によると、デブリがある格納容器内は放射線量が高く人が近づけない。また容器内はかなり狭く、そこへの貫通孔も小さい――など大きな技術的困難の伴うものだ。早期の再開を期したい。

戦後、世界の原子力開発では米国が中心で当初、各国の原子力の専門家を自国に呼び指導した。日本の原子力界も草創期から米国に依存し大きな恩恵を受けた。しかし、廃炉にまでは踏み込んでいない。

今、原子炉の開発から廃炉まで、核エネルギーの平和利用の全般を提示してその信を改めて問う時代になった。わが国でも「原子力の全貌とその研究開発の枠組みを明確にし、『正論としての原子力開発』を提示すること」(藤家洋一著『原子力-総合科学技術への道』)が大事だ。

「技術には光と影がある。その影の部分を払拭しながら、原子力技術、原子力文明をより明確に形作っていく必要がある」とも。廃炉への道筋を付け、世界から信用される確固としたエネルギーシステムを示してほしい。

中国、ロシアなどが新興・途上国のエネルギー不足を狙い、原子炉の売り込みを本格化させている。日本も、新しい原子炉建設を含め世界の競争に負けてはならない。

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