自民党総裁選も佳境に入り、すでに終盤を迎えている中、派閥解消という異例の状況下で、今回の総裁選はなかなか読めないという声を、政治評論を生業にする人たちから聞いた。
これまでは派閥単位を基本構造としていたから計算ができたのだ。しかし、分からないでは済まされぬ。やれ◯◯氏が議員票で優勢とか〇〇氏が党員・党友票では先行だとかもっともらしい解説をする。
派閥の縛りが解け、議員個人の政治的裁量が拡がるのか。それとも「裏金」問題が落ち着き、いつの間にか「派閥的なもの」が復活するのか。票の読みはともかく、「ポスト派閥」の政界がどうなるのかも見定めていく必要がある。
次元は違うが、似た構造様式が1990年代の冷戦終結ではないか。米ソ両超大国を盟主とする東西冷戦期では、全面核戦争の危機という重い暗雲が覆ったのは確かだが、米ソのにらみが利いて大規模な地域紛争が起きることはなかった。
ところが、冷戦終結で「パンドラの箱」が空いてしまった。冷戦が終われば平和な世界が訪れ、その「配当」が今後の世界にもたらされるという希望的観測が打ち砕かれる。冷戦後の世界は、各国が自己の国益を主張して同盟国間でも対立するようになった。
永田町における派閥の「冷戦終結」は自民党の不祥事、岸田文雄首相の追い込まれ辞任に起因するだけに次元は低い。せめて乱立した候補陣営をどう収拾していくか。総裁選後の自民党の正念場だ。