【上昇気流】サイトウ良さんの遺作展

ドローイング「瞑―泰然 自若」110×110㌢

版画家サイトウ良さんの遺作展が東京・銀座のギャラリーGK(中央区銀座6の7の16)で開催中だ。サイトウさんは第2回ストックホルム国際版画展(1995年)で金賞を受賞し、その作品は欧米でも高く評価されてきた。

セリグラフ作品「風に吹かれて」は全国美術教科書(2006~11年)にも紹介された。小紙の元日号でも22年まで十数年にわたって初日の出のイラストを掲載してきたので、記憶にある読者もいることだろう。

最後のイラストを掲載したその1月に亡くなり、茨城県牛久市にある自宅には大量の作品が残された。今回展示されているのはその一部で、作品を準備したのは管理している子息の斎藤明さん。

会場は路地を入った所にあって、入り口にサイトウさんの肖像写真が。作品は額装されないまま壁面いっぱいに展示され、宇宙をテーマとした抽象作品はじめ、富士山などの具象作品もある。

一つの作品に50版も使ったというセリグラフと、ペンと鉛筆だけで描いた富士山の風景とでは、テーマも、描き方も、道具も違うのだが、作品に込められた鮮烈な力のようなものは共通している。

展示会で会う人といえば、かつてはファンや美術関係者だった。だが今回、会場で出会ったのは、息子さん一家や弟さん、十数年間サイトウさんの絵画教室に通っていたという若い母親ら。サイトウさんの背景には、その人生を支えた家族や教え子らがいたことを知った。21日まで。

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