【上昇気流】五穀豊穣「黄金の国」

稲穂

「黄金の国ジパング」とは、マルコ・ポーロの『東方見聞録』にある日本のことだ。黄金とは文字通り、金銀の黄金を指すそうだが、それがなくても「黄金の国」を実感できる。それが今。稲穂がたわわに実った田園風景に、である。

田は春に水が張られると青空を映し出し、そこに萌黄(もえぎ)色の稲の苗が植えられ育つと一面、若草色に変貌する。夏が過ぎると黄色を強め、やがて黄金色に染まる。

都会に住む人も郊外に向かう電車に乗れば、黄金の国を味わえる。車窓からの街並みは、最初は住宅だけだが、田畑が交じり始めると、やがて田畑だけになる。そこに黄金の輝きがある。多忙であれば5円玉をご覧あれ。稲穂が輝いている。

日本に稲作が伝わったのは縄文後期。本格的な水田が造られたのは、天武天皇の御世(みよ)に条里制が施行されてからだ。水田を6町(360歩)間隔で正方形に区切り、6歳以上の男女に一定の耕作地が与えられた。新田開発、用水開削を重ねて今日に至っている。

水田ゆえに連作が可能で、国土の8割が山地の日本にあっては黄金に勝る宝だろう。近代経済学の祖アダム・スミスは「水田はもっとも多産的な穀物畑よりも、はるかに大量の食物を生産する」(『国富論』)と絶賛している。

「お米1粒には7人の神様がいる」と言われる。それは太陽、雲、風、水、土、虫、人のこと。米不足に値上がり。いろいろの思いもあろうが、まずは五穀豊穣に感謝したい。

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