韓国で今、空前の日本歌謡曲ブームが起きている。これまではアニメソングなどが主だったが、現在人気を集めているのは松田聖子さんや中森明菜さんらの1980年代の歌謡曲という。
そのきっかけとなったのが、ケーブルテレビMBN制作の「韓日歌王戦」という番組。毎回、日韓の歌手が歌を競い合う。日本の高校生、住田愛子さんが、近藤真彦さんの「ギンギラギンにさりげなく」を力強いダンスと共に披露。600万回以上の動画再生回数を記録した。
韓国では日本人の歌手が日本語で歌うこと自体稀(まれ)なことだったが、番組では、福岡県出身の高校生、東(あずま)亜樹さんが、天使のような歌声で「千と千尋の神隠し」の主題歌を歌った。東さんは韓国演歌「木浦(モクポ)の涙」や「釜山港へ帰れ」なども韓国語で歌い人々を魅了。「演歌の神童」と呼ばれている。
ブームの背景には、若い世代だけでなく、80年代当時、テレビやラジオで流れることのなかった日本の歌謡曲に海賊版などを通じて密(ひそ)かに親しんだ人たちの存在があるという。
日本におけるKポップ人気も依然高い。日本大学教授の刑部芳則(おさかべよしのり)氏の新著『昭和歌謡史』(中公新書)によると、日本と韓国の歌謡交流は古賀メロディーなどを通じ戦前から盛んで、現在まで続いているのも「こうした兄弟の関係性が固く結ばれているからだろう」。
時の政権の意向でしばしば翻弄(ほんろう)される日韓関係だが、歌を通じての心の交流はそれを超える根強さがある。