【上昇気流】選ばれる基準はさまざま

自民党総裁選候補者の共同記者会見を前に、撮影に応じる(左から)高市早苗経済安全保障担当相、小林鷹之前経済安全保障担当相、林芳正官房長官、小泉進次郎元環境相、上川陽子外相、加藤勝信元官房長官、河野太郎デジタル相、石破茂元幹事長、茂木敏充幹事長=9月13日午後、東京・永田町の同党本部

新紙幣では文学者の肖像が選ばれなかった。これまで紙幣の肖像となった文学者は夏目漱石と樋口一葉。NHK大河ドラマ「光る君へ」の紫式部の肖像も使われたことがあるが、印象は薄い。

財務省のホームページによると、選ばれる基準は「偽造防止の観点から、なるべく精密な写真を入手できること」「肖像彫刻の観点からみて、品格のある紙幣にふさわしい肖像であること」「肖像の人物が国民各層に広く知られており、その業績が広く認められていること」とある。

文学賞には、文豪の名前を付けたものが多い。有名なのは、やはり芥川賞や直木賞である。これも、有名であるかどうかといった点だけで選ばれていないのは興味深い。

例えば、明治の文豪の中で代表的な存在である森鴎外の名前の賞はない。漱石の場合は創設されたことがあるが、今ではない。作品名から取った「坊っちゃん文学賞」はある。そのほか泉鏡花、谷崎潤一郎、三島由紀夫、川端康成、大佛(おさらぎ)次郎、太宰治らの名前を付けた賞がある。

創設される理由は紙幣とは違って恣意(しい)的である。芥川賞と直木賞は、菊池寛が追悼の意味で設けたことが知られている。地方の文化振興のために創設されたものも多い。紫式部文学賞は京都府宇治市主催である。

自民党総裁選では論戦が本格化しているが、選ばれる基準は政治的な思惑から。山本七平著『「空気」の研究』ではないが、永田町を支配している政治の空気ばかりは読みにくい。

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